夢の卵

子どもの頃、イベントで見たアロサウルスの復元模型は、お尻を地面につけて直立する、いわゆる「ゴジラ」型だった。
骨格的にそれでは歩けないと分かってきて、ジュラシック・パークの頃には背筋が地面と平行になり、ついでに意外と俊足になった。
 
かつては巨大トカゲのイメージで、色はせいぜい緑か茶色。所詮残っているのは骨だけなのだから、肌や目の色や質感は想像するしかないんだと思っていた。
それが体毛や羽根の跡の残る化石が発見されるようになり、トカゲよりも鳥に近いと言われるようになり、最近の復元図ではティラノサウルスまでがカラフルな羽毛を生やしている。
骨の研究から再現した声、それも成体と幼体両方のものを、実際に展示会で聞いたときは、すごく不思議な気分だった。
 
ジュラシック・パーク上映当時、とうとうDNAから古代生物を復元できる時代が来たのかと、わくわくした。
実際には、恐竜時代のDNAは古すぎて復元することはできないらしい。
でも、細かな羽毛まで閉じこめられた琥珀が発見されたりしていると、もうちょっと技術が進歩したらあるいは、なんて考えてしまう。
ニワトリ恐竜化の研究があるくらいなら、鳥に近い小さいものなら何とか出来たりしないんだろうか。始祖鳥とか……無理かな。
 
古代生物の研究は日進月歩で、毎年のように新しい発見があったり旧説が覆されたりしている。十年後には、きっとまったく違う古代世界が展開されている。
この数十年での恐竜像の変わりようを目の当たりにしているので、この先も何が起こってもおかしくないと思っている。そしていつか卵から始祖鳥が、なんてことも──やっぱりないかな。
 
ところで去年はよく「ゴジラ見ないの?」と訊かれた。
恐竜と怪獣はまったく別物、ということが、興味のない人には意外と分かってもらえない。